穀雨を迎えて、辺りの水田には水が入りはじめた。こうなると町がまるでうるおう。朝、窓をあけると水のにおいがして、鳥が水を啄んでいる。いたるところで蛙も鳴きはじめて、虫もとぶ。長い冬を抜けて、みんなが待ちのぞんでいたみたいだ。
蛙の鳴き声というとそろそろはじまる蛙の大合唱。360度に水田がある農道ではその最盛期には蛙のライブ会場となる。誇張ではなく、ほんとうにライブ会場、しかも小さめのライブハウスでしか味わえないほどの音圧が味わえるのだ。耳から入るよりも先に身体がふるえはじめるあの感じ。心臓に響いてくるあの感じ。蛙の声は360度の面から飛んでくるが、じっさいのライブ会場には360度を取り囲んだスピーカーなんて仕掛けはないわけだから、それ以上に素晴らしい体験ができる。
水が入ってから一週間ほどで田植えがあるようだ。少しずつ水を入れているところと一気に水を入れているところとがある。上のほうでぴーひゃらひゃらひゃらと鳴いているのはヒバリということを知った。1分くらい続けて鳴いているから鳥としてはわかりやすい。